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2026.09.18
|Column
山本理久
「いい人がいたら、何人でも採用したいんです。」
採用の打ち合わせの中で、何度もこの言葉を聞いてきました。ただ、最近ふと思うことがあります。
営業なら、経験がある人。
若手なら、素直で明るい人。
管理職なら、マネジメント経験がある人。
企業によって「いい人」の定義はさまざまです。でも、採用を長く見ていると、少し違和感を覚えることがあります。
採用要件を聞いていると、「こんな人が欲しい」という条件はたくさん出てくるのに、「なぜ、その人が必要なのか」まで言葉になっていないことがあります。
「コミュニケーション能力が高い人」
「主体性がある人」
「経験豊富な人」
「長く働いてくれる人」
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけでは「いい人」ではなく、「会社にとって都合のいい人」を探しているだけになってしまう可能性があります。私は、ここに採用の難しさがあると思っています。

以前の私は、採用において「能力」や「経験」をかなり重視していました。
もちろん、今でもスキルや経験は大切です。ただ、組織をつくる側に立ってみると、それだけでは説明できないことが増えてきました。
どれだけ経験があっても、周囲と協力できなければチームとして力を発揮できない。逆に、経験が浅くても、自分で考えて動き、失敗から学び、周囲を巻き込める人が、想像以上の成果を出すこともある。
だから最近は、「この人は優秀か?」だけではなく、「この人が入ることで、組織はどう変わるだろう?」と考えるようになりました。
個人の能力だけを見るのではなく、その人と会社、そしてチームとの関係を見る。
これは、第二回のコラムで書いた「エースが11人いても、11人が一つになったチームには敵わない」という話にもつながります。
エースが11人いても、最強のチームには勝てない。高校サッカーが教えてくれた組織づくりの本質
採用では「カルチャーフィット」という言葉もよく使われます。会社の価値観に合う人を採用する。これは非常に重要です。ただ、ここにも一つ問いがあります。
「合う人」ばかりを採用して、本当に組織は強くなるのだろうか。
全員が同じ考え方をして、同じ価値観を持っていたら、居心地はいいかもしれません。
でも、新しい発想は生まれるでしょうか。組織が成長するためには、共通する価値観と、異なる視点の両方が必要だと思っています。
「自社に合う人」ではなく、「自社の大切にしているものを理解したうえで、新しい価値を持ち込んでくれる人」を探す。そんな視点も、これからの採用には必要なのではないでしょうか。

採用の仕事をしていると、どうしても「誰を採るか」に目が向きます。でも、本当はその前に「どんな組織をつくりたいか」があるはずです。
どんな人が活躍する会社なのか。
どんな人となら、チームとして強くなれるのか。
どんな価値観を守り、どんな価値観を変えていきたいのか。
そこまで考えて初めて、「自社にとってのいい人」が見えてくる。そして、もう一つ大切なのは、採用する側だけが人を選んでいるわけではないということです。
候補者も、その会社を見ています。
「この会社で成長できるだろうか。」
「この人たちと働きたいと思えるだろうか。」
「自分のやりたいことは実現できるだろうか。」
つまり採用とは、企業が「いい人」を探す活動ではなく、お互いに「ここで一緒に働く意味がある」と思える接点を探す活動なのかもしれません。
だから、もし明日「いい人が欲しい」と言われたら、私はこう聞いてみたい。
「その“いい人”が入社したら、会社に何が起きてほしいですか?」
その答えの中に、採用すべき人の輪郭が隠れているのではないかと考えています。
