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2026.08.14
|採用コラム
山本理久
営業として働き始めた頃、私は「結果がすべて」だと思っていました。
売上をつくる。
目標を達成する。
表彰される。
成果を出した人が評価されるのは当然ですし、その考え自体は今も変わっていません。
ただ、チームを持つ立場になったとき、一つの違和感を抱くようになりました。
「成果だけを称賛していて、本当に組織は強くなるのだろうか。」
営業という仕事は、数字がすべて見える世界です。
契約件数、売上、目標達成率。
評価もしやすく、称賛もしやすい。
でも、その数字の裏側には、結果には表れない努力が必ずあります。
初めて自分からお客様に提案できた日。
失注した理由を自分なりに分析し、次の提案に生かそうとしたこと。
苦手だったことに挑戦し、昨日より少しだけ前に進めたこと。
こうした出来事は、数字には残りません。
しかし、私はむしろ、そうした行動こそが未来の成果をつくる種だと思っています。
だから私は、チームを持つようになってから、「称賛の基準」を変えようと考えました。
成果だけではなく、挑戦したことも称賛する。
失敗から学んだことも称賛する。
自分で考えて行動したことにもスポットライトを当てる。
もちろん、何でも褒めればいいという話ではありません。
大切なのは、「未来につながるプロセス」を見逃さないことです。
第二回のコラムでも書いたように、私は結果と同じくらいプロセスを大切にしています。
成功にも失敗にも、必ずプロセスがあります。
そして、そのプロセスの中には、次の成果につながるヒントが隠れています。
もし、挑戦した人が結果だけで評価されるのであれば、人は次第に挑戦しなくなります。
失敗を恐れ、無難な選択をするようになります。
それは本人だけでなく、組織全体の空気にも影響します。
「失敗しないこと」が評価される組織では、新しい挑戦は生まれません。
一方で、「挑戦したことを見てくれている」と感じられる組織では、人はもう一歩踏み出そうと思える。この違いは、想像以上に大きいと感じています。
私は高校時代、サッカー部で毎日ボールを追い続けました。
朝から晩まで練習し、インターハイ予選では決勝まで進むことができました。
あの頃を振り返ると、監督や仲間が評価していたのは、ゴールを決めた瞬間だけではありませんでした。
最後まで走り切ったこと。
仲間のために体を張ったこと。
声を出し続けたこと。
ピッチに立つ11人だけではなく、ベンチから誰よりも大きな声で応援する選手がいたこと。
そうした一つひとつの姿勢がチーム全体の基準をつくっていました。
だから試合で勝てたのだと思います。社会に出てからも、この感覚は変わりません。
成果は一人でつくるものではありません。
誰かの準備があり、誰かの支えがあり、誰かの挑戦がある。
その積み重ねが結果になります。
にもかかわらず、結果だけを称賛してしまえば、その土台をつくっている行動は見えなくなってしまいます。
私は、称賛とは「褒める技術」ではなく、「見ようとする姿勢」だと思っています。
相手の行動を見ている。
挑戦を見ている。
努力を見ている。
そのメッセージが伝わるだけで、人は「また頑張ろう」と思えるものです。
今の採用市場では、「石の上にも三年」という言葉を聞く機会が減りました。
転職は当たり前になり、人材不足も年々深刻になっています。
採用して、辞めて、また採用する。
そんな繰り返しに悩んでいる企業も少なくありません。
もちろん、採用を強化することは重要です。
しかし、それと同じくらい、「この会社で頑張りたい」と思える環境をつくることも重要ではないでしょうか。
その環境は、立派な制度だけで生まれるものではありません。
毎日の「ありがとう」。
「見ていたよ」という一言。
挑戦した人に向けられる拍手。
そうした小さな称賛の積み重ねが、「ここなら頑張れる」という安心感を育てていくのだと思います。
称賛は、成果に対するご褒美ではありません。
未来の挑戦を増やすための投資です。
では、あなたの会社では、誰にスポットライトが当たっているでしょうか。
結果を出した人だけでしょうか。
それとも、まだ結果には届かなくても、未来を変えようとしている人にも光が当たっているでしょうか。
その違いが、一年後の組織の景色を大きく変えているのかもしれません。