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2026.10.30
|採用コラム
山本理久
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「AIが採用業務の大半をやってくれるようになったら、採用担当者は何をするんだろう」
AIエージェントのニュースを見るたびに、最近そんなことを考えます。
求人票をつくる。スカウトを送る。
候補者を探す。面接日程を調整する。
応募者を分析する。選考データを整理する。
今まで人が何時間もかけていた仕事を、AIが数分でやってしまう。10年後には「採用担当者」という仕事の中身そのものが、今とは大きく変わっているかもしれません。
では、AIが採用の仕事をほとんどやってくれるようになったとしたら。私は何をするのか。最近は、この問いを自分自身に投げるようになりました。

6年半ほど採用支援の仕事をしてきて、Piicでは自分たち自身の組織づくりにも向き合っています。その中で感じるようになったのは、採用の本当のゴールは「入社」ではないということです。
採用した人が活躍する。
その人がチームに良い影響を与える。
チームが強くなる。会社が成長する。
そして、そこで働く本人も「この会社に入ってよかった」と思える。私がこれからやりたいのは、ここまでを設計することです。例えば、AIが「この人は当社にマッチしています」と候補者を連れてきてくれたとする。そこで私がやりたいのは、「じゃあ採用しましょう」ではありません。
「この人が入社したら、どんな仕事を任せよう?」
「この人の強みを活かすには、今の組織の何を変えたらいい?」
「半年後、この人が活躍している状態って、具体的にどんな状態?」
そこまで考えたいと思っています。採用した人を組織に当てはめるのではなく、人が入ることで組織そのものがどう変わるかを考える。私が目指したいのは、そんな仕事です。

採用担当者として、これまで「採用できたかどうか」を追いかけることは多くありました。でも、これからはその先をもっと見たい。
入社30日後。90日後。半年後。その人は何につまずいているのか。誰に相談しているのか。チームの中で、どんな役割を担っているのか。最初に聞いていた「入社理由」は、今も変わっていないのか。
逆に、「思っていた会社と違った」と感じていることはないか。こうした情報を拾い続けたいと思っています。なぜなら、そこには次の採用を良くするヒントがあるからです。「採用したけど活躍できなかった」で終わらせない。
なぜ活躍できなかったのか。
採用時の見立てが違ったのか。
仕事内容に問題があったのか。
上司との関係なのか。
育成の仕組みなのか。
組織文化なのか。
一つひとつ分解して、次の採用や組織づくりに戻していく。採用→入社→活躍→離職・定着→学び→次の採用。この循環そのものを設計する。私なら、そんな仕事に時間を使いたいです。

第3回でも書きましたが、AIはこれからもっと賢くなると思います。
だからこそ、AIに勝とうとは思っていません。求人票をつくるならAIに手伝ってもらえばいい。候補者を探すならAIに探してもらえばいい。データ分析もAIにやってもらえばいい。
その分、私は人と話したい。経営者と話す。現場の社員と話す。候補者と話す。入社したばかりの人と話す。そして、そこで感じた「なんか気になる」を放置しない。
「最近、あの人元気ないな。」
「この部署だけ離職が続いているな。」
「この求人だけ、なぜか応募が多いな。」
「この人は面接では良いことを言っていたけど、本当にやりたいことは別にあるんじゃないか」
数字になる前の違和感を見る。私は、そこに人の仕事が残ると思っています。
また、私の個人的な意見になりますが、AIや事業環境の変化によって人事の仕事が変わっても人事がこれまでと変わらずやるべきことは、熱量や想いが必要な場面には、人が取り組み向き合い続けるとことだと思います。
一方で、人事評価、制度、事務作業(書類選考など)はAIがファクトに基づいて行っていくと思いますが、人事領域に磨きをかけていく人はどんどん市場価値が上がっていくと感じています。
人事が新たに担うべき役割は「人を管理する人」から「人と組織の未来をつくる人」へ進化させることで、AIが前提の職場でも、人事が担い続けるべき価値は「人を理解し、一人ひとりの可能性を信じ、その可能性が発揮される組織をつくること」だと思っています。
そのために自分たちが変えるべきこと・守るべきことは、 AIが仕事を担う時代だからこそ、人事は「人をどう活用するか」だけでなく、「人がどうすれば幸せに働き、成長できるか」を考え続けるべきだと思います。

もし10年後、私がまだ「採用」という仕事をしていたら。肩書きは、もしかすると採用担当者ではないかもしれません。私自身は「組織の編集者」みたいな存在になりたいと思っています。会社には、経営者の想いがある。社員一人ひとりの想いがある。候補者にも、その人の人生や価値観がある。
そこに事業の未来がある。それぞれを聞いて、つないで、必要なら組み替えていく。
「この会社には、こういう人が必要だ」
「この人には、こういう環境が合う」
「この組織には、今この仕組みが必要だ」
そんなことを考えながら、人と組織の間にあるズレを少しずつなくしていく。それが、私が考える「人と組織の未来をつくる」という仕事の具体的な姿です。

AIがどれだけ進化しても、私が残したいものがあります。それは「人をちゃんと見る」ということです。
成果だけを見るのではなく、そこに至るプロセスを見る。失敗だけを見るのではなく、そこから何を学んだかを見る。経歴だけを見るのではなく、その人が何を考えているのかを見る。そして、会社の条件だけではなく、そこで働く人がどんな未来を描けるのかを見る。
第二回で書いたように、私は「個人の熱が次の誰かに伝わっていく組織」が強い組織だと思っています。その熱は、データだけでは測れない。
誰かの本気を見て、「自分もやろう」と思う。誰かの失敗を見て「自分はこうしてみよう」と考える。誰かに「見てくれていたんだ」と感じて、もう一度挑戦する。
そういう人と人との連鎖をつくることは、これからも人間の仕事なのだと思います。だから、10年後に採用担当者がいるかどうかは、正直わかりません。でも、私自身は「人を採る人」で終わりたくない。
人が入ることで会社がどう変わるのか。人が働くことで、その人の人生がどう変わるのか。その両方を考えられる人でいたい。
AIによって「人を採る」という仕事が減ったとき、私たちは何をするのか。
もしかすると、それは仕事を奪われる話ではなく、「本当は何のために採用をしていたのか」を、もう一度考える機会なのかもしれません。10年後、採用担当者はいるのか。その答えよりも、10年後、私たちは「人と組織に何を残した人」になっているのか。私はそこを考え続けたいと思っています。
