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白石 真衣

採用戦略のフレームワークとは?企業が導入するメリットや採用戦略の立て方を解説

採用戦略のフレームワークとは?企業が導入するメリットや採用戦略の立て方を解説

採用戦略とは、企業の経営目標を達成するために、どのような人材をいつまでに、どうやって採用するのかを計画的に進めるための筋道のことです。
感覚や慣習に頼った人材採用から脱却し、計画的に成果を出すには、その立て方が重要になります。

本記事では、採用戦略の策定に役立つフレームワークとは何か、企業が導入するメリットや具体的な活用法を解説します。

Index

企業の採用戦略が重要性を増している理由

現代のビジネス環境において、計画的な採用戦略の重要性はますます高まっています。
その背景には、労働市場や働き手を取り巻く大きな変化が存在します。

単に求人を出して応募を待つだけの手法では、企業が必要とする人材を確保することが難しくなりました。
なぜ今、緻密な採用戦略が求められるのか、その理由を3つの側面から見ていきましょう。

少子高齢化による労働人口の減少

日本は少子高齢化の進行により、生産年齢人口が長期的に減少しています。
これは、企業にとって採用可能な人材の母数が減ることを意味し、企業間の人材獲得競争は激化の一途をたどっています。
特に、専門的なスキルを持つ若手や中堅層の採用は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。

このような売り手市場の状況下では、偶然や幸運に頼るのではなく、自社の魅力を的確に伝え、ターゲットとなる人材に計画的にアプローチする戦略的な採用活動が不可欠です。
限られた人材の中から自社を選んでもらうためには、これまで以上に工夫を凝らした取り組みが求められます。

働き方の多様化に伴う価値観の変化

リモートワークやフレックスタイム制度の普及に代表されるように、働き方は大きく多様化しました。
それに伴い、求職者が仕事に求める価値観も変化しています。
かつては給与や企業の安定性が重視される傾向にありましたが、現在では仕事内容のやりがい、自身の成長機会、ワークライフバランス、企業文化との適合性など、より多角的な視点で企業を選ぶようになっています。

企業は、こうした多様な価値観に対応し、自社が提供できる独自の魅力を明確に打ち出す必要があります。
画一的なメッセージではなく、ターゲットとする人材の心に響く訴求を考え、実行する戦略性が採用の成否を分けます。

採用手法の複雑化とチャネルの増加

従来の求人サイトや人材紹介だけでなく、SNSを活用したソーシャルリクルーティング、企業から候補者に直接アプローチするダイレクトリクルーティング、社員の紹介によるリファラル採用など、採用手法は増え続けています。
それぞれのチャネルには異なる特性があり、ターゲットとする層も異なります。
そのため、自社が求める人材に最も効果的にアプローチできる手法を見極め、適切に組み合わせる必要があります。

これは、まさに採用マーケティングの考え方であり、どの媒体で、どのようなメッセージを発信するのかを戦略的に設計しなくてはなりません。
多くの選択肢の中から最適な手法を選び、一貫したメッセージを発信するには、計画的なアプローチが欠かせません。

採用戦略にフレームワークを導入する3つのメリット

採用戦略を立てる際にフレームワークを活用することは、感覚的な採用活動から脱却し、論理的で再現性の高い活動へと進化させる上で大きな利点をもたらします。
これまで見過ごされがちだった課題を客観的に捉え、関係者間の意思疎通を円滑にし、最終的には採用の質を高める効果が期待できます。

具体的にどのようなメリットがあるのかを3つのポイントに絞って解説します。

採用活動における課題を客観的に可視化できる

フレームワークを用いることで、採用活動の全体像を構造的に整理し、どの部分に問題があるのかを客観的に把握できます。
応募数が少ない選考中の辞退者が多い内定承諾率が低いといった漠然とした課題に対し、どこに根本的な原因があるのかを論理的に分析する手助けとなります。

例えば、採用ファネルのフレームワークを使えば、候補者が認知から応募、内定に至る各段階でどれだけ離脱しているか(歩留まり)を数値で可視化できます。
これにより、経験や勘に頼るのではなく、データに基づいた的確な改善策を立案することが可能になります。

社内の関係者との共通認識をスムーズに形成できる

採用活動は、人事部だけでなく経営層や現場の各部門など、多くの関係者が関わるプロジェクトです。
関係者それぞれの立場で「求める人材像」や「採用の進め方」に対する考えが異なると、選考基準がぶれたり、候補者へのアピール内容に一貫性がなくなったりする恐れがあります。

フレームワークは、採用戦略の骨子を誰もが理解しやすい形で示す共通言語の役割を果たします。
ペルソナ設計や3C分析といったフレームワークを通じて、「どのような人材を」「なぜ」「どのように採用するのか」を明確に共有することで、関係者間の認識のズレを防ぎ、全社一丸となって採用活動に取り組む体制を築けます。

採用のミスマッチを防ぎ定着率が向上する

採用の最終的なゴールは、内定を出すことではなく、入社した人材が活躍し、長く会社に定着してくれることです。
フレームワークを活用して採用ターゲットを明確化し、自社の強みや弱み、企業文化を客観的に分析することで、候補者に対して等身大の情報を正確に伝えられるようになります。

これにより、候補者は入社後の働き方を具体的にイメージでき、「思っていた会社と違った」という入社後のギャップ、いわゆる採用のミスマッチを減らすことができます。
結果として、早期離職率の低下と定着率の向上につながり、採用コストや育成コストの削減にも貢献します。

採用戦略の策定で役立つ6つのフレームワーク

採用戦略を具体的に策定する際には、思考を整理し、分析を深めるためのフレームワークが非常に役立ちます。
様々な種類のフレームワークが存在しますが、どれか一つを使えばよいというわけではなく、目的に応じて使い分けることが重要です。

ここでは、採用戦略の分析や立案で広く活用される代表的なものを6つ紹介します。
コンサル会社が提供するテンプレートや、noteなどで公開されている実践資料も参考にしながら、自社の状況に合ったものを活用しましょう。

【3C分析】競合や市場から自社の立ち位置を把握する

3C分析は、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から現状を分析するフレームワークです。
これを採用活動に当てはめると、Customerは「求職者や労働市場の動向」、Competitorは「人材獲得で競合する他社」、Companyは「自社」となります。
具体的には、求職者が企業に何を求めているのか、競合他社はどのような条件や魅力を提示して採用活動を行っているのかを調査します。

その上で、自社の強みや弱みを相対的に評価することで、採用市場における自社のユニークな立ち位置を明確にし、他社との差別化を図るための戦略を立てられます。
この3Cの視点を持つことで、独りよがりではない客観的な戦略策定が可能になります。

【4C分析】求職者視点で採用活動を考える

4C分析は、企業視点の4P(Product,Price,Place,Promotion)を顧客視点に置き換えたマーケティングのフレームワークで、採用活動にも応用できます。
4つのCは、顧客価値(CustomerValue)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)を指します。

これを採用に置き換えると、求職者にとっての価値(仕事のやりがい、成長環境)、応募や選考にかかる時間的・心理的コスト、応募プロセスの分かりやすさやアクセスの良さ、選考過程での企業との円滑なコミュニケーションといった視点から自社の採用活動を評価できます。
企業側の都合だけでなく、常に応募者の視点に立って活動全体を見直すことで、候補者体験の向上につながります。

【SWOT分析】自社の強みと弱みを整理し戦略に活かす

SWOT分析は、自社の内部環境である「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部環境である「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」の4つの要素を整理し、分析する手法です。
採用活動においては、自社の社風や待遇、ブランドイメージなどを内部環境、労働市場の動向や競合の採用強化などを外部環境として捉えます。

これらの要素を洗い出した上で、「強みを活かして機会を掴むにはどうするか」「弱みを補強して脅威に備えるにはどうするか」といった具体的な戦略オプションを導き出します。
自社の置かれた状況を多角的に把握し、戦略の方向性を定める上で非常に有効なフレームワークです。

【ペルソナ設計】求める人物像を具体的に設定する

ペルソナ設計とは、採用したい人物像を、単なるスキルや経験の羅列ではなく、年齢、価値観、ライフスタイル、情報収集の方法まで含めて、一人の架空の人物として具体的に描き出す手法です。
「20代の営業経験者」といった抽象的なターゲット設定ではなく、「都内在住28歳、IT業界で法人営業を3年経験。現在の仕事にやりがいは感じているが、より裁量権のある環境で事業の成長に直接貢献したいと考えている」のように詳細に設定します。

ペルソナを具体的にすることで、その人物に響くメッセージは何か、どの採用チャネルで接触すべきかが明確になり、求人広告の文面作成から面接での質問内容まで、一貫性のある効果的なアプローチが可能になります。

【採用ファネル】候補者の心理段階ごとに課題を洗い出す

採用ファネルは、候補者が自社を認知してから入社に至るまでの一連のプロセスを、漏斗(ファネル)のような形で可視化したものです。
一般的に「認知→興味・関心→応募→選考→内定→入社」といった段階に分けられます。
各段階の候補者数を計測し、次の段階へ移行する割合(歩留まり率)を分析することで、採用プロセスのどこにボトルネックがあるのかを特定できます。

例えば、「認知」から「応募」への移行率が極端に低い場合は、求人情報の魅力が十分に伝わっていない可能性があります。
このように、データに基づいて課題を発見し、ピンポイントで改善策を講じるために非常に有効なフレームワークです。

【TMP設計】採用ターゲットに響く訴求内容を定義する

TMP設計は、「誰に(Target)」「何を(Message)」「どのように(Promotion)」伝えるかを明確にするためのフレームワークです。
これは、採用活動におけるコミュニケーション戦略の根幹をなす考え方です。
まず、ペルソナ設計などで定義した採用ターゲット(Target)を定めます。

次に、そのターゲットに最も響く自社の魅力や価値(Message)は何かを言語化します。
最後に、そのメッセージをターゲットに届けるために最適な手段(Promotion)、つまり求人媒体やSNS、イベントなどの採用チャネルを選定します。
このTMPに一貫性を持たせることで、訴求効果が最大化され、効果的な採用ブランディングにもつながります。

【6ステップ】フレームワークを活用した採用戦略の立て方

採用戦略の策定は、やみくもに進めるのではなく、順序立てて行うことが成功の鍵です。
フレームワークは、この採用戦略の立て方の各ステップで思考を整理し、意思決定を助けるツールとして機能します。

Step1. 経営戦略と事業計画を深く理解する
Step2. 採用したい人物像(ペルソナ)を明確に定義する
Step3. 自社の魅力やアピールポイントを言語化する
Step4. 最適な採用手法とアプローチ方法を選定する
Step5. 具体的な採用スケジュールとKPIを設定する
Step6. 策定した採用戦略を社内全体で共有する

ここでは、具体的な採用戦略の立案から実行に移すまでの流れを6つのステップに分けて解説します。
この一連のプロセスを通じて、効果的な採用戦略設計を行いましょう。
戦略策定の際には、これらのステップを順番に踏むことが重要です。

Step1. 経営戦略と事業計画を深く理解する

採用戦略は、独立して存在するものではなく、常に経営戦略や事業計画と連動していなければなりません。
まず初めに行うべきは、自社が今後どのような方向に進もうとしているのか、そのためにどのような事業を展開していく計画なのかを深く理解することです。
会社のビジョンや中期経営計画を確認し、経営層にヒアリングを行いましょう。

「なぜ今、人材を採用する必要があるのか」「事業目標の達成には、どのような能力や経験を持つ人材が何人必要なのか」という採用活動の根幹となる目的を明確にします。
この土台がしっかりしていなければ、どれだけ精緻な戦略を立てても、企業の成長に貢献しない採用になってしまう可能性があります。

Step2. 採用したい人物像(ペルソナ)を明確に定義する

経営戦略や事業計画への理解を深めたら、次はその実現のために具体的にどのような人材が必要なのかを定義します。
このステップで役立つのが「ペルソナ設計」のフレームワークです。
単にスキルや職務経験といった条件をリストアップするだけでなく、その人物の価値観や仕事に対するスタンス、キャリアプランといった内面まで掘り下げて人物像を具体化します。

現場の部門長や将来一緒に働くことになる社員にもヒアリングを行い、チームにフィットし、高いパフォーマンスを発揮できる人物像を解像度高く描き出しましょう。
明確なペルソナを設定することで、採用に関わる全ての関係者が共通の目線を持つことができます。

Step3. 自社の魅力やアピールポイントを言語化する

採用市場において、自社が候補者から選ばれるためには、競合他社にはない独自の魅力、いわゆるアピールポイントを明確に伝える必要があります。
このステップでは、「3C分析」や「SWOT分析」といったフレームワークが役立ちます。
求職者のニーズや競合の動向を踏まえつつ、自社の強みを客観的に洗い出しましょう。

給与や福利厚生といった待遇面はもちろん、事業の将来性、独自の企業文化、社員の成長を支援する制度、社会貢献性など、多角的な視点から魅力を探します。
そして、それらを「働きがい」「成長環境」といった求職者の心に響く言葉で具体的に言語化することが重要です。

Step4. 最適な採用手法とアプローチ方法を選定する

求める人物像(ペルソナ)と、伝えるべき自社の魅力が明確になったら、それらをターゲットに届けるための最適な方法を選びます。
ここで「TMP設計」の考え方が活きてきます。
設定したペルソナは、普段どのような媒体で情報を収集しているでしょうか。
転職サイトを頻繁にチェックするのか、SNSでの情報収集が中心か、あるいは知人からの紹介を信頼するタイプか。

ペルソナの行動特性を考慮し、求人広告、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、リファラル採用など、数あるチャネルの中から最も効果的なものを選択します。
一つの手法に固執せず、複数のチャネルを組み合わせることで、より多くのターゲットにアプローチできます。

Step5. 具体的な採用スケジュールとKPIを設定する

戦略を具体的な行動計画に落とし込むためには、明確なスケジュールと成果を測るための指標(KPI)が不可欠です。
「いつまでに、何人採用する」という最終目標を設定し、そこから逆算して、募集開始、書類選考、面接、内定出しといった各プロセスの期限を定めます。
同時に、採用活動の進捗を客観的に評価するためのKPIを設定します。

ここでは「採用ファネル」の考え方を活用し、応募数、書類通過率、一次面接通過率、内定承諾率などの指標を設け、それぞれの目標値を決めます。
定期的にKPIの進捗を確認し、計画と実績に乖離がある場合は、その原因を分析して軌道修正を行います。

Step6. 策定した採用戦略を社内全体で共有する

採用活動は人事部門だけで完結するものではなく、経営層から現場の社員まで、全社的な協力があって初めて成功します。
最後に、ここまで策定してきた採用戦略の全体像、特に採用したい人物像(ペルソナ)や自社のアピールポイント、選考基準などを関係者全員に丁寧に共有しましょう。

特に面接を担当する社員には、評価の基準や候補者に伝えるべき自社の魅力について、事前に十分な説明を行い、目線を合わせておく必要があります。
全社員が「採用担当者」であるという意識を持ち、一貫したメッセージを候補者に伝えることで、企業の魅力がより効果的に伝わり、採用の成功確率が高まります。

【企業規模別】採用戦略を立てる際の考え方

これまで解説してきた採用戦略の立て方の基本は、どの企業にも共通するものです。
しかし、企業の規模によって、保有するリソース(資金、人員、知名度)や抱える課題は大きく異なります。
したがって、戦略を具体化する際には、自社の状況に合わせた工夫が必要です。

ここでは、大企業、中小企業、ベンチャー企業それぞれの事例を例に、新卒採用や中途採用における考え方のポイントを解説します。

大企業における採用戦略のポイント

大企業は、高い知名度、安定した経営基盤、充実した福利厚生といった強みを持ち、多くの候補者を集めやすいという利点があります。
しかし、その知名度に安住し、従来通りの待ちの採用を続けていると、本当に必要な多様な人材を獲得しきれない可能性があります。
応募者の中から選ぶだけでなく、ダイレクトリクルーティングなどを活用して、企業側から積極的にアプローチする攻めの姿勢も重要です。

また、組織が大きいために画一的な採用になりがちですが、事業部門ごとのニーズは異なります。
各部門が求める専門性やカルチャーに合わせたきめ細やかな情報発信や選考プロセスの設計が求められます。

中小企業における採用戦略のポイント

中小企業は知名度や採用予算の面で大企業に劣る場合が多く、人材獲得競争において不利な立場に置かれがちです。
そのため、大企業と同じ土俵で戦うのではなく、自社ならではの魅力を最大限に打ち出す差別化戦略が不可欠です。
例えば、経営者との距離の近さ、意思決定の速さ、若いうちから裁量権を持って働ける環境、地域社会への貢献度などを具体的にアピールします。

採用チャネルも、コストを抑えながら自社にフィットする人材と出会えるリファラル採用や、地域のハローワークや大学との連携強化などが有効です。
社長自らが採用の前面に立ち、熱意を伝えることも候補者の心を動かす強力な武器になります。

ベンチャー・スタートアップ企業における採用戦略のポイント

ベンチャーやスタートアップ企業は、事業が急成長段階にあり、変化が激しい環境です。
知名度や安定性、整った教育制度よりも、企業のビジョンやミッションへの共感、事業を共に創り上げていく情熱を持った人材を惹きつけることが最も重要になります。

そのためには、SNSやブログ、イベント登壇などを通じて、代表の想いや企業文化、働く社員のリアルな姿を積極的に発信する「採用広報」に力を入れることが効果的です。
選考では、スキルフィット以上にカルチャーフィットを重視し、会社の未来を一緒に築いていける仲間かどうかを見極めます。
候補者に対しては、事業の可能性や成長機会を魅力的に語り、ワクワク感を醸成することが採用成功の鍵となります。

採用戦略で失敗しないために押さえるべき注意点

フレームワークを活用して緻密な採用戦略を立てたとしても、いくつかの重要なポイントを見過ごしてしまうと、計画が絵に描いた餅で終わってしまうことがあります。
戦略を成功に導くためには、策定後の運用段階で特に注意すべき点があります。

ここでは、採用戦略で失敗しないために、常に意識しておきたい4つの注意点を解説します。

フレームワークの活用そのものを目的にしない

3C分析やSWOT分析などのフレームワークは、採用戦略を論理的に構築するための強力なツールですが、それらを活用すること自体が目的になってはいけません。
よくある失敗例として、フレームワークをきれいに埋めて分析しただけで満足してしまい、その後の具体的なアクションに繋がらないケースが挙げられます。

重要なのは、分析を通じて得られた気づきや課題を、自社の採用活動を改善するための具体的な施策に落とし込み、実行することです。
フレームワークはあくまで思考を整理し、客観的な視点を得るための手段であると常に認識しておく必要があります。

設定したターゲットの視点を常に意識する

採用活動は、企業が候補者を選ぶ場であると同時に、候補者が企業を選ぶ場でもあります。
ペルソナを設定し、採用戦略を策定した後も、常にそのターゲットの視点に立って物事を考えることが重要です。
「この求人広告の文面は、ターゲットの心に響くだろうか」「選考プロセスは、候補者にとってストレスのないものになっているか」など、候補者体験(CandidateExperience)を向上させる意識を忘れてはなりません。

企業側の都合だけで選考を進めたり、一方的な情報発信に終始したりすると、たとえ優秀な候補者であっても、途中で離脱してしまう原因になります。

採用活動の進捗を定期的に評価し改善を繰り返す

一度策定した採用戦略は、決して固定的なものではありません。
労働市場の動向、競合の動き、自社の事業状況などは常に変化します。
そのため、戦略を立てっぱなしにするのではなく、定期的にその有効性を評価し、必要に応じて見直しを行うことが不可欠です。

事前に設定したKPI(応募数、内定承諾率など)の進捗を週次や月次で確認し、計画通りに進んでいない部分があれば、その原因を分析して改善策を講じましょう。
この計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のPDCAサイクルを回し続けることで、採用戦略の精度は着実に高まっていきます。

内定後のフォローアップ体制を構築しておく

採用活動は、候補者に内定通知を出した時点で終わりではありません。
特に複数の企業から内定を得ている優秀な人材は、内定から入社日までの期間に、本当に入社すべきかじっくりと比較検討します。
この期間のフォローが手薄だと、内定辞退につながるリスクが高まります。

内定者懇親会の開催や、配属予定部署の先輩社員との面談機会の設定、定期的な連絡による進捗確認などを通じて、内定者の入社意欲を維持し、不安や疑問を解消する体制を整えておくことが重要です。
入社前に帰属意識を高めることで、スムーズな立ち上がりと入社後の定着を促進します。

採用戦略のフレームワークについてよくあるご質問

Q1.採用戦略はいつ立てるべきですか?

A1.企業の事業計画と連動させるため、新年度が始まる前や、事業年度の開始に合わせて策定するのが理想的です。ただし、市場環境は常に変化するため、年度の途中であっても事業計画に大きな変更があった際や、採用活動が計画通りに進んでいない場合には、随時見直しを行う必要があります。

Q2.たくさんあるフレームワークのうち、どれを使えばいいですか?

A2.採用戦略のどのフェーズにいるかによって、有効なフレームワークは異なります。まずは、自社の強み・弱みや市場環境を整理するために「SWOT分析」を、採用したい人物像を具体化するために「ペルソナ設計」を使ってみるのがおすすめです。目的に合わせて、必要なものを組み合わせて活用しましょう。

Q3.採用にかける予算はどのように決めればよいですか?

A3.まず「採用目標人数×1人あたりの採用単価の目標値」で大枠の予算を算出するのが一般的です。採用単価は、過去の実績や利用する採用チャネルの料金相場を参考に設定します。これに加えて、採用ブランディングのためのイベント開催費用や、新たなツール導入費用なども考慮に入れると、より精緻な予算計画が立てられます。

Q4.小さな会社で、採用に十分な人手をかけられません。

A4.限られたリソースで採用を成功させるためには、工夫が必要です。社員の知人を紹介してもらう「リファラル採用」は、コストを抑えつつカルチャーフィットした人材と出会いやすい手法です。また、採用業務の一部を外部の専門家に委託する採用代行(RPO)サービスを活用することも有効な選択肢となります。

Q5.採用戦略を立てても、なかなか応募が集まりません。

A5.応募が集まらない場合、いくつかの原因が考えられます。そもそもターゲット設定が適切でない、求人情報で自社の魅力が伝わっていない、あるいはターゲットが見ていない採用チャネルを使っている可能性があります。採用ファネルの考え方で「認知」や「興味・関心」の段階に課題がないかを確認し、メッセージやアプローチ方法を見直してみましょう。

まとめ

採用戦略とは、企業の持続的な成長を実現するために、経営計画と連動した人材獲得の設計図を指します。
そしてフレームワークは、その設計図を客観的かつ論理的に描く上で有効な思考のツールです。
本記事で紹介した各種フレームワークや戦略の立て方を参考に、自社の現状分析、ターゲットの明確化、そして具体的なアクションプランの策定を進めることが求められます。

重要なのは、戦略を一度立てて終わりにするのではなく、採用活動の進捗を定期的に評価し、市場の変化に対応しながら改善を繰り返していくプロセスそのものです。

採用戦略を「伝わる形」に落とし込みませんか?

採用戦略を描くだけでは、求める人材には届きません。
大切なのは、企業の想いや魅力を 求職者目線でわかりやすく伝えること です。

Piicでは、採用戦略・ペルソナ設計を踏まえた
採用サイト制作・採用パンフレット制作 を通じて、
「共感され、選ばれる採用ブランディング」をご支援しています。

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