
採用活動における「歩留まり」とは、各選考段階で次のステップに進んだ候補者の割合を示す指標です。
この歩留まり率を把握することで、採用プロセスのどこに課題があるのかを客観的に分析できます。
本記事では、歩留まり率の計算方法や業界ごとの平均値、そして具体的な改善策について詳しく解説します。
自社の採用活動を見直し、より効果的な採用戦略を立てるための参考にしてください。

Index
-
採用活動における「歩留まり」の基本的な意味
-
採用歩留まり率の計算式と各選考フェーズの平均値
-
採用プロセス全体の歩留まり率を算出する方法
-
【選考段階別】歩留まり率の計算例と目安となる平均値
-
採用の歩留まり率が低下してしまう4つの原因
-
原因1:候補者の期待と企業情報とのギャップ
-
原因2:他社と比較して選考スピードが遅い
-
原因3:候補者とのコミュニケーション不足
-
原因4:面接官の対応が悪い
-
【タイミング別】歩留まり低下が起こりやすい選考ステップ
-
応募から書類選考に進む段階
-
面接の日程調整から実施までの段階
-
最終面接から内定承諾までの段階
-
採用の歩留まり率を改善するための具体的な5つの施策
-
施策1:採用フロー全体を見直し選考期間を短縮
-
施策2:求人情報や採用サイトの内容を最新化
-
施策3:候補者の入社意欲を高める魅力的な動機付け
-
施策4:面接官のスキルアップ研修の実施
-
施策5:内定者への手厚いフォロー
-
よくあるご質問
-
Q. 歩留まり率の目標値はどのように設定すれば良いですか?
-
Q. 中途採用と新卒採用で歩留まり率の平均値は異なりますか?
-
Q. 歩留まりが特に悪いのですが、どこから手をつければ良いですか?
-
Q. 採用管理システム(ATS)は歩留まり改善に役立ちますか?
-
Q. 内定辞退の本当の理由を聞き出す方法はありますか?
-
まとめ
採用活動における「歩留まり」の基本的な意味

もともと製造業で使われていた「歩留まり」という言葉は、投入した原料に対して実際に完成した製品の割合を指します。
これを採用活動に置き換えると、応募者という「母集団」から、内定承諾という「成果」に至るまで、各選考プロセスを通過した人材の割合を意味します。
つまり、歩留まりとは、採用活動の効率性や健全性を測るための重要な指標です。
この数値を分析することで、選考フローのどの段階で候補者が離脱しやすいのかを可視化し、具体的な改善策の立案に役立てることが可能です。
採用歩留まり率の計算式と各選考フェーズの平均値

採用活動の成果を客観的に評価するためには、採用歩留まり率を正しく計算し、その数値を分析することが不可欠です。
各選考フェーズにおける歩留まり率を算出し、一般的な平均値と比較することで、自社の採用プロセスに潜む課題を発見できます。
ここでは、具体的な計算式と、目安となる各選考段階の平均値を紹介します。
これらのデータを活用して、採用活動のボトルネックを特定しましょう。
採用プロセス全体の歩留まり率を算出する方法
採用プロセス全体の歩留まり率は、最初の応募者数から最終的に何人が入社を決めたかを示す指標です。
この数値を算出するための計算式は「内定承諾者数÷応募者数×100」となります。
例えば、応募者が500人で、そのうち5人が内定を承諾した場合、全体の歩留まり率は1%です。
この数値は、採用活動全体の効率性を大まかに把握するために役立ちます。
ただし、この全体の数値だけを見ていても、どの選考段階に問題があるのかは分かりません。
そのため、プロセスを細分化し、各段階での歩留まり率を個別に計算することが重要になります。
【選考段階別】歩留まり率の計算例と目安となる平均値
採用活動の課題を正確に把握するには、選考段階ごとの歩留まり率を算出する必要があります。
例えば、「書類選考通過率」は「書類選考通過者数÷応募者数」、「一次面接通過率」は「一次面接通過者数÷書類選考通過者数」で計算します。
各段階の歩留まり率の目安となる平均値は以下の通り。
一般的に、新卒採用では書類選考通過率が30〜50%程度が目安とされます。最終面接後の内定承諾率は、情報源によって異なりますが、35%程度や50%程度とする調査結果が見られます。自社の数値と比較し、平均値を大きく下回る箇所が改善すべきポイントです。
採用の歩留まり率が低下してしまう4つの原因

採用の歩留まり率が悪い、つまり選考の途中で候補者が離脱してしまう背景には、様々な原因が潜んでいます。
候補者との間に生じる認識のズレや、企業の対応の遅れ、コミュニケーション不足などが主な要因として挙げられます。
これらの課題を放置すると、優秀な人材を確保する機会を逃しかねません。
原因1:候補者の期待と企業情報とのギャップ
原因2:他社と比較して選考スピードが遅い
原因3:候補者とのコミュニケーション不足
原因4:面接官の対応が悪い
ここでは、歩留まり率が低下する以上の代表的な4つの原因を掘り下げ、それぞれの問題点について具体的に解説します。
原因1:候補者の期待と企業情報とのギャップ
歩留まりが悪い原因の一つに、候補者が抱く期待と企業が提供する情報のミスマッチがあります。
求人広告や採用サイトで企業の魅力的な側面ばかりを強調し、実際の業務内容や職場環境、あるいは厳しい側面について十分に伝えていない場合、選考が進むにつれて候補者は「思っていたのと違う」と感じてしまいます。
特に、面接で話を聞くうちに、求人情報から受けた印象とのギャップが大きくなると、候補者は不信感を抱き、選考を辞退する可能性が高まります。
透明性のある情報提供ができていない状況は、歩留まり率を悪化させる大きな要因です。
原因2:他社と比較して選考スピードが遅い
選考スピードの遅さも歩留まり率が悪化する大きな原因です。
特に優秀な候補者は複数の企業を同時に受けているケースがほとんどです。
書類選考の結果通知に1週間以上かかったり、面接の日程調整が滞ったりすると、その間に他社から内定が出てしまう可能性があります。
候補者の志望度が高い状態を維持するためには迅速な対応が不可欠です。
連絡が遅い、次のステップへの案内がないなど、選考プロセスにおける対応が悪いと、候補者は「自分は重要視されていない」と感じ、他の企業へと気持ちが傾いてしまいます。
原因3:候補者とのコミュニケーション不足
選考期間中における候補者とのコミュニケーション不足は、歩留まり率が悪い状況を招きます。
合否連絡などの事務的なやり取りだけでなく、候補者の疑問や不安に寄り添う姿勢が求められます。
例えば、面接後にフォローの連絡がない、質問への返信が遅いといった状況では、候補者は企業に対する関心を失っていきます。
定期的な情報提供や、現場社員と話す機会を設けるなど、双方向のコミュニケーションを意識しないと、候補者は孤独感を覚え、入社への意欲が低下してしまいます。
関係構築への配慮が足りないことが、歩留まりが悪い結果につながるのです。
原因4:面接官の対応が悪い
面接官の対応が悪いことは、候補者の入社意欲を著しく低下させ、歩留まりを悪化させる直接的な原因となります。
高圧的な態度を取る、候補者の話を遮る、否定的な発言をするといった行為は、候補者に不快感を与え、「この会社では働きたくない」と思わせてしまいます。
面接は企業が候補者を評価する場であると同時に、候補者が企業を見極める場でもあります。
面接官が自社の「顔」であるという意識を持たず、準備不足のまま臨んだり、候補者への配慮に欠ける対応をしたりすると、企業のイメージそのものを損ないかねません。
【タイミング別】歩留まり低下が起こりやすい選考ステップ

採用プロセス全体を通して、特に歩留まりが悪い、つまり候補者の離脱が多発しやすい特定のステップが存在します。
応募から書類選考、面接の日程調整、そして最終面接から内定承諾に至るまでの各段階には、それぞれ異なるハードルがあります。
自社の採用活動において、どのタイミングで候補者が離脱しているのかを正確に把握することが、効果的な改善策を講じるための第一歩です。
ここでは、歩留まりの低下が起こりやすい3つの選考ステップを解説します。
応募から書類選考に進む段階
応募から書類選考に進む段階の歩留まりが悪い場合、主に二つの要因が考えられます。
一つは、そもそもターゲットとなる人材からの応募が少ない、あるいは全くないケースです。
これは、求人媒体の選定ミスや、求人情報に魅力がないことが原因と考えられます。
もう一つは、応募は集まるものの、自社の求める要件に満たない候補者ばかりで、書類選考の通過率が極端に低いケースです。
この場合、求人情報で求めるスキルや経験が曖昧であったり、企業の魅力が正しく伝わっていなかったりする可能性があります。
面接の日程調整から実施までの段階
書類選考を通過したにもかかわらず、面接に至る前に辞退されてしまうケースも少なくありません。
この段階で歩留まりが悪い主な原因は、日程調整のやり取りがスムーズに進まないことです。
例えば、企業側から提示される面接候補日が極端に少なかったり、候補者からの返信に対するレスポンスが遅かったりすると、候補者の意欲は徐々に低下します。
特に在職中の候補者は、限られた時間の中で転職活動を行っているため、柔軟かつ迅速な対応ができない企業に対しては、不信感を抱き、選考を辞退してしまうのです。
最終面接から内定承諾までの段階
最終面接から内定承諾までの期間は、採用プロセスの中で最も歩留まりが悪化しやすい段階です。
最終面接を終えた候補者は、他社からも内定を得ている可能性が高く、複数の選択肢の中から入社する企業を慎重に選んでいます。
このタイミングで内定通知が遅れたり、提示された労働条件に不明瞭な点があったりすると、候補者は不安を感じます。
また、内定を出した後のフォローが不十分な場合も、入社への決意が揺らぎ、内定辞退につながります。
最後のクロージングがうまくいかないことが、歩留まりが悪い大きな原因となります。
採用の歩留まり率を改善するための具体的な5つの施策

採用の歩留まり率が低い原因を特定したら、次はその課題を解決するための具体的な施策を実行に移す段階です。
選考プロセスの見直しや情報発信の強化、候補者とのコミュニケーションの質の向上など、多角的なアプローチが求められます。
ここでは、採用歩留まりの改善に直結する以下5つの具体的な施策を紹介します。
施策1:採用フロー全体を見直し選考期間を短縮
施策2:求人情報や採用サイトの内容を最新化
施策3:候補者の入社意欲を高める魅力的な動機付け
施策4:面接官のスキルアップ研修の実施
施策5:内定者への手厚いフォロー
これらの取り組みを通じて、候補者の離脱を防ぎ、優秀な人材の確保につなげることが可能です。
施策1:採用フロー全体を見直し選考期間を短縮
歩留まり率を改善する上で、選考期間の短縮は非常に効果的です。
まずは、応募から内定までの全体のフローを可視化し、各ステップにかかっている日数を洗い出しましょう。
書類選考の結果通知や面接日程の調整など、時間を短縮できる工程がないか確認します。
例えば、一次面接と二次面接を同日に行う、オンライン面接を積極的に活用する、社内の承認プロセスを簡略化するなど、意思決定を迅速化する工夫が必要です。
候補者の熱意が冷めないうちに選考を進める体制を整えることで、他社に先んじることができ、歩留まりの改善につながります。
施策2:求人情報や採用サイトの内容を最新化
候補者とのミスマッチをなくし、歩留まりを改善するためには、求人情報や採用サイトで発信する情報の見直しが不可欠です。
仕事内容や役割、求めるスキルセットをできるだけ具体的に記述し、候補者が働く姿をイメージできるようにします。
また、企業のポジティブな面だけでなく、課題や仕事の厳しさといったリアルな情報も正直に伝えることで、入社後のギャップを防ぎます。
活躍している社員のインタビューや一日のスケジュールなどを掲載し、情報の透明性を高める改善を行うことで、候補者は安心して選考に進むことができ、求人応募の質も向上します。
施策3:候補者の入社意欲を高める魅力的な動機付け
候補者が「この会社で働きたい」と強く感じるような魅力付けを行うことは、歩留まり改善に欠かせません。
面接では、候補者のスキルを見極めるだけでなく、候補者のキャリアプランや価値観を深くヒアリングしましょう。
その上で、自社で働くことが、その候補者にとってどのようなメリットや成長機会をもたらすのかを具体的に伝えます。
また、年齢の近い現場社員との面談の場を設け、カジュアルな雰囲気で質疑応答ができる機会を作るのも有効です。
個々の候補者に合わせた動機付けを丁寧に行うことで、志望度を高める改善が期待できます。
施策4:面接官のスキルアップ研修の実施
面接官の対応は、候補者の入社意欲に直接的な影響を与えます。
そのため、面接官のスキルを向上させるための研修を実施することは、歩留まり改善のために重要です。
研修では、自社の評価基準を再確認して面接官同士の目線を合わせたり、候補者の本音や潜在能力を引き出すための質問方法を学んだりします。
また、候補者の緊張を和らげ、対等な立場で対話するためのコミュニケーションスキルも磨きます。
面接官全員が会社の代表であるという意識を持ち、面接の質を均一に高く保つ改善を行うことで、候補者の満足度を高めることが可能です。
施策5:内定者への手厚いフォロー
内定を出した後から入社までの期間は、候補者の不安が最も高まる時期です。
この期間に手厚いフォローを行うことで、内定辞退を防ぎ、歩留まりを改善できます。
具体的には、人事担当者から定期的に連絡を入れたり、内定者懇親会や社内イベントへの招待、配属予定部署の上長や先輩社員との面談などを企画したりします。
こうした取り組みを通じて、内定者が抱える疑問や不安を解消し、会社の一員として迎え入れる姿勢を示すことが大切です。
入社までの期間を「空白期間」にしないためのフォロー体制の改善が、内定承諾率の向上に直結します。
よくあるご質問
Q. 歩留まり率の目標値はどのように設定すれば良いですか?
A. まずは過去の自社の採用データから各選考段階の歩留まり率を算出し、現状を把握します。
その上で、業界の平均値や競合他社の動向を参考にしつつ、現実的に達成可能な目標を設定することが重要です。
特定の段階の数値が極端に低い場合は、まずそこを平均値まで引き上げることを短期的な目標にすると良いでしょう。
Q. 中途採用と新卒採用で歩留まり率の平均値は異なりますか?
A. はい、異なります。
一般的に、中途採用は即戦力を求めるため選考基準が厳しく、候補者も複数の企業を同時に受けているため、新卒採用に比べて各段階での歩留まり率が低くなる傾向があります。
特に内定承諾率は、条件交渉なども発生するため変動が大きいです。
Q. 歩留まりが特に悪いのですが、どこから手をつければ良いですか?
A. まずは、選考プロセスのどの段階で最も候補者が離脱しているのかを特定することから始めます。
例えば、「最終面接から内定承諾」の歩留まりが極端に低いのであれば、内定後のフォロー体制やオファー面談の内容に問題がある可能性が高いです。
ボトルネックとなっている箇所に集中的に改善策を講じるのが最も効率的です。
Q. 採用管理システム(ATS)は歩留まり改善に役立ちますか?
A. はい、役立ちます。
ATSを導入することで、候補者情報の一元管理や選考進捗の可視化が容易になります。
これにより、連絡漏れや対応の遅れを防ぎ、選考スピードの向上につながります。
また、各選考段階の歩留まり率を自動で集計・分析する機能もあるため、データに基づいた迅速な課題発見と改善活動が可能になります。
Q. 内定辞退の本当の理由を聞き出す方法はありますか?
A. 電話や対面など、直接対話できる形でヒアリングの機会を設けることが有効です。
メールでは建前の理由が書かれがちですが、丁寧な口調で「今後の採用活動の参考にさせていただきたい」と真摯に伝えることで、本音を話してくれる可能性があります。
辞退者アンケートを実施し、匿名で回答してもらう方法も一つの手段です。
まとめ
採用活動の成功は、単に応募者を集めるだけでなく、選考プロセスを通じて候補者の入社意欲を維持し、最終的に入社へとつなげることが重要です。
そのためには、採用歩留まりという指標に注目し、自社の採用活動をデータに基づいて客観的に分析する必要があります。
各選考段階の歩留まり率を定期的に計測し、数値が低い箇所があればその原因を特定し、改善策を実行していくPDCAサイクルを回していくことが求められます。
本記事で紹介した原因分析や改善策を参考に、自社の採用プロセスを見直し、より効果的な採用活動を実現してください。
歩留まりの改善には「応募者を惹きつけ、最後まで熱量を維持する仕組み」が欠かせません。
Piicの 採用ブランディング は、企業の想いや強みを言語化・可視化し、候補者に伝わる形に整えることで、採用成功へとつなげます。
採用プロセス改善の次の一手として、ご検討ください。
