CONTACT

SHIGA1000

Company

滋賀の食文化を世界へ。平和堂の海外展開事業「BIWAKO FOOD PRODUCT」の挑戦

2026.08.28

株式会社平和堂

スーパーマーケットが、自分の売り場を持たない外国の地で商品を売る。

それだけ聞けば、奇妙な話に聞こえるかもしれません。しかし平和堂にとっては、当然の選択だったのです。

人口減少と市場縮小という課題に直面する日本の地方で、地域の食品事業者をどのように支援し、持続可能な経済循環を実現するか。滋賀県を中心に展開するスーパー大手・平和堂は、この問いに独自のアプローチで向き合っています。同社が展開する「BIWAKO FOOD PRODUCT」事業は、地域の中小食品事業者の海外展開を支援し、新たな販路開拓を通じて地域経済の活性化を目指す取り組みです。

事業を担当する髙部さんと國本さんに背景や展望を伺うとともに、実際に支援を受けて海外へ羽ばたいた美冨久酒造株式会社、株式会社天平の実例を交え、滋賀の食文化が持つポテンシャルに迫ります。

写真右:髙部格(株式会社平和堂 地域共創事業部 地域共創課)
青果部門出身。経営戦略室を経て現在の部署に配属。地域共創という観点から、滋賀県および平和堂が出店する地域の経済循環を支える事業の企画・実行を担当。「BIWAKO FOOD PRODUCT」事業では、事業全体の戦略立案と推進を行っている。
(※ 所属・肩書きは2026年6月に実施した取材当時のものです)

写真左:國本英美子(平和堂 地域共創部 地域共創事業部 地域共創課)
旅行部門で15年間勤務し、本部への異動をきっかけに現在の事業に従事。事業の立ち上げから携わり、事業者の海外展開支援に従事。自身も味噌作りやぬか漬けを日常的に実践するほど、発酵食品への深い関心を持つ。

「チーム滋賀」で挑む、地域経済の持続可能な循環

ーースーパーが、自社の売り場ではなく海外に商品を送り出す。一見すると本業から遠い取り組みに見えますが、平和堂にとってこれはどういう位置づけなのでしょうか?

髙部: スーパーの特性上、私たちの通常の売り場に並ぶのは、どうしても日常性の高い商品が中心になります。しかし、滋賀にはそれだけでは収まらない、素晴らしいこだわりを持った商品がたくさんあります。

滋賀県を中心とした地域経済の循環を維持するためには、平和堂の店舗という枠を超え、より大きな市場への販路を拡大する必要があります。地域の生産者が経済的に自立し、規模を維持・拡大できるよう支援することが、私たちの役割です。

ーー「BIWAKO FOOD PRODUCT」事業が始まった背景について教えてください。

髙部: 背景には、やはりコロナ禍による大きな環境変化がありました。当時、弊社の旅行部門の利用が大幅に減少したことで、新たな事業を模索する必要が生じたのです。そこでJTB様からの人材支援を受け、新たな公募事業を企画するスキームを構築したことから、この事業がスタートしました。

國本: 私はもともと店舗の旅行カウンターに15年ほど勤務していたのですが、コロナ禍のタイミングで本部に異動となり、たまたまこの事業の立ち上げに携わることになりました。最初は戸惑いもありましたが、今では滋賀の経済発展に貢献でき、やりがいのある「天職」だと感じています。

ーー海外展開の最初のステップとして、香港を選ばれたのはなぜですか?

髙部: 事業者からの強い要望があったことと、香港市場の大きさが理由です。アメリカなどと比較しても、香港はコストや規制といった参入障壁が低く、最初のステップとして適していました。将来的な中国本土への展開も視野に入れつつ、アクセスの良さや市場の魅力が決め手となりました。

「地味だけど滋味深い」滋賀の発酵文化を世界へ

ーー事業を始めるにあたり、國本さんは何から手をつけられたのですか?

國本: まずはとにかく事業者様のところに足を運び、どんな思いで商品を作られているかを聞くことから始めました。また、輸出に関する知識が全くなかったので、農林水産省やJETRO(日本貿易振興機構)のセミナーを受け、各国の規制の違いや、フォワーダーやディストリビューターといった専門用語などの初歩的な知識を必死に蓄える毎日でしたね(笑)。

ーーその中で、滋賀の食文化、特に「発酵」に強く惹かれていったそうですね。

國本: 滋賀の食は、色で言うと茶色や白色が多く、見た目は決して派手ではありません。しかし、そこには旨味と栄養が凝縮されています。私はこれを「地味だけど滋味深い」と表現しています。

琵琶湖の水、そしてかつて街道を行き交う人々の中で発達した保存技術(さば寿司やふな寿司など)が、この独特な発酵文化を育てました。見た目の「映え」ではなく、体に良くておいしいものを求める海外の方には、これが強力なセールスポイントになります。

究極のゴールは「人口も経済も縮小しない滋賀」の実現

ーー事業者に伴走する上で、最も大切にしていることは何ですか?

國本: 事業者によって、規模も輸出経験も将来のビジョンも全く異なります。家族経営の小さなところには「価値を分かってくれる人に少量でもコンスタントに届ける支援」を、大きな工場を持つところには「より大きな市場へ届ける支援」を。それぞれの思いに合わせたオーダーメイドのサポートを心がけています。

単なる「点」の輸出ビジネスではなく、地域のマルシェなども含めて「面」で深くつながる面白さがあります。事業に参加したことで、雇用が増えたという事業者様も出てきており、地域経済への貢献を実感しています。

ーーこの事業が目指す、最終的なゴールを教えてください。

髙部: 究極のゴールは、「人口や経済規模が縮小しない滋賀(および平和堂の出店地域)」を実現することです。これはボランティアではありません。平和堂にとっても、事業として成立し、地域の生産者も儲かり、海外の消費者も素晴らしいものに出会える。三方よしの自走可能なビジネスモデルを構築していきます。

今後は、単に商品を届けるだけでなく、「滋賀の日本酒×他地域の食材」といった、滋賀の食文化そのものを提案する付加価値の高い輸出へと展開させていきたいですね。

「個」の挑戦から「チーム滋賀」へ。視点の変化がもたらした再挑戦

滋賀県甲賀市で伝統的な酒造りを続ける美冨久酒造は、平和堂の海外展開支援事業に4年連続で参加しています。

【「BIWAKO FOOD PRODUCT」事業における美冨久酒造の海外展開の歩み】

1年目:東京「輸出エキスポ」への参加
2年目:香港現地への渡航
3年目:アメリカ市場へのアプローチ
4年目:再び香港へ

実は、同社は過去に単独で香港市場へ参入し、市場の仕組みがわからないまま競合に埋もれ、撤退せざるを得なかった苦い経験を持っています。

藤居: 「自力でやろうとした時と、平和堂さんが伴走してくださる現在とでは、安心感が全く違います。なにより、他の食品事業を営む仲間たちと『チーム滋賀』として一緒にチャレンジできることが一番大きいです」

4年間継続してこの事業に参加したことで、海外に対するマインドにも大きな変化が生まれたと言います。

藤居:  「初年度に『東京で魅力をどう伝えるか』というセミナーを受け、目線がガラリと変わりました。それまでは『うちの酒をどう売るか』ばかり考えていましたが、今は『滋賀の郷土のもの、ここで生まれ育った文化を世界に持っていく』という意識になりました。この事業とともに、自分たちも確実に成長できていると実感しています」

ビジネス目線の伴走が生んだ、加工食品の海外展開への手応え

キムチ、大福、近江牛の加工品を主力として急成長を遂げている株式会社天平。営業部門の責任者である榎さんは、京都での経験を経て「故郷である滋賀に恩返しがしたい」と、発酵食品を中心とした地域産業の振興に力を注いでいます。

今回は、滋賀県産の大豆を使用し、京都の職人とコラボレーションした「キムチにあう納豆」で香港市場に挑戦します。

過去に公的機関のサポートを受けて海外展開に挑戦した際、加工食品特有の厳しい規制の壁にぶつかったという榎木さん。平和堂の支援には、流通のプロならではの強みがあると語ります。

榎: 「平和堂さんは、僕たち事業者の気持ちや、『利益が必要だ』というビジネスの現実をよく理解してくれています。『コストは大丈夫か』『採算は取れるか』という点まで配慮してくれる。 さらに、普段から商品を預かってくださっているからこそ、『これは冷やさないといけない』『こう運ぶべき』という商品の特性を熟知されています。発酵食品への理解が深く、プランAがダメでもプランBを提案してくれる引き出しの多さが、本当に頼もしいです」

平和堂の事業を通じて香港のリアルな情報に触れ、実際に現地を肌で感じたことで、榎さんの視界は広がりました。

榎: 「現地に行くことで、『この形なら、将来的には当社単独でも海外展開ができるかもしれない』というリアルな手応えを得ることができました。生まれ育った滋賀への恩返しとして、これからも発酵食品の魅力をどんどん世界へ打ち出していきたいです」

「チーム滋賀」が紡ぐ、地方創生の新しいかたち

平和堂の「BIWAKO FOOD PRODUCT」事業は、単なる商品の輸出仲介ではなく、地域の小売大手が持つ「仕入れ・物流・販売」という本業のリソースをフルに活用した、非常に実践的な地方創生モデルです。

印象的なのは、支援を受ける事業者たちが口を揃えて「平和堂の伴走があるから、孤独ではない」「滋賀を背負って挑む視点に変わった」と語ること。担当者自身が滋賀の発酵食品をはじめとした食文化に惚れ込み、事業者と「面」で付き合う泥臭いまでの熱量が、関わる人々を一つのチームにしています。

「地味だけど滋味深い」食文化が世界を魅了する日は、そう遠くないかもしれません。平和堂と滋賀の事業者たちの挑戦は、これからも続いていきます。

企業名 株式会社平和堂
所在地 滋賀県彦根市西今町1番地
創業年 1957年3月1日
代表者 代表取締役 社長執行役員CEO 平松正嗣
事業内容 食料品・衣料品・住居関連品等の総合小売業
企業ロゴ 株式会社平和堂
企業一覧に戻る

New
Project

ALL
VIEW MORE

Follow Us