創業1923年。スポーツ用品店から始まり、銃砲と爆薬の許可事業へと発展してきた老舗。 次期代表の濵﨑さんは、縮小が続く銃砲業界の現実と向き合いながら、「狩猟は目的ではなく、文化や暮らしを豊かにする“手段”」という視点で事業を再構築している。ジビエの利活用、アクセサリーやレザーなど副産物の活かし方、誰でも体験できる射撃シミュレーター、地域企業とのコラボ。滋賀を“狩猟の街”としてブランディングしていく構想と、そこに込めた思いを伺いました
うちは1923年頃に創業したんですが、最初は「スポーツ商店」だったと聞いています。ペット用品なんかも扱っていたそうで、いわゆる”なんでも屋”のようなお店だったんです。 そのうちに、親戚が長崎の方で貿易の仕事をしていて、どういう経緯かはもう口伝えでしか残ってないんですけど、銃の取り扱い権利がこちらに回ってきたらしいんです。それをきっかけに「じゃあやってみようか」という流れで銃砲事業を始めたのがルーツです。 その後、祖父の代で、銃と同じ許可区分にある爆薬(ダイナマイト)も取り扱うようになって、現在の「銃砲事業」と「爆薬事業」の二本柱が出来ました。今の形が整ったのはその頃ですね。
銃の所持許可を持っている人は、50年前がピークで、そこから約6割減っています。現在は全国でおよそ20万人ほどですが、そのうちの約6割が60歳以上。つまり、10〜20年後には一気に半分以下になると言われています。 このままだと、単に業界が衰退するだけでなく、狩猟という文化そのものが途絶えてしまう可能性がある。それにより、有害鳥獣の個体数が増え、害獣被害が現在よりも拡大し、土砂崩れや農林業への被害も拡大するという危険性も孕んでいます。だから、次の世代にこの文化をちゃんと繋いでいくことが、僕の代の使命だと思っています。
正直に言うと、僕は「狩りをすること」に楽しさを感じたことはないです。もちろん、外来生物や農業被害の観点から必要な面もあるんですが、単純に「殺すこと」が目的になるのは違うと思っています。 だからこそ、「殺して終わり」ではなく、その後を大切にしたい。いただいた命をちゃんと料理して、美味しくいただく。骨や角、毛皮なども捨てずに活かす。例えば、鹿の角をアクセサリーにしたり、毛皮をレザー製品にしたり。そういう「命の循環」を感じられる仕組みを作りたいんです。 僕にとって狩猟は「目的」ではなく「手段」。人と自然、人と命がより良く関わるための一つのツールだと思っています。
そうですね。うちの店舗は昔ながらの銃砲店のイメージを変えたいと思っていて、誰でも入りやすいように意識しています。具体的には、射撃シュミレーターを導入して、初心者でも安全に「体験」できるようにしています。関西でシュミレーター施設として運営しているのは弊社しかなく、全国的にも珍しい取り組みです。さらに、滋賀県の特産品やアパレルなども置いています。銃に興味がなくても「ちょっと見てみよう」と思ってもらえるきっかけになるように。唐辛子を使った調味料を販売していて、それが実はジビエ料理にも合うんです。そういう形で、食やファッションなど日常の延長線で”狩猟文化”に触れられるようにしています。
はい、大きく変わりましたね。以前は「銃を持つ人」か「これから始めたい人」しか来なかった。でも今は、子ども連れの家族や、サバイバルゲームを趣味にしている方、FPSゲームが好きな若い層なども来てくれます。「興味はあるけど、入っていいのかわからなかった」という声も多くて。だからこそ、入口を広げることが本当に大事だと実感しています。お店が”体験の入口”になって、そこから文化に触れてもらえる。それが理想ですね。
そうなんです。お客さんの質問をされても、最初は全然答えられなくて(笑)これは自分でやらないとダメだと思って、銃の許可を取って実際に競技を始めました。 やってみたら想像以上に面白くて、のめり込みましたね。つい最近福岡の大会で自己ベストを出して、オリンピックのネクストアスリート(強化選手)枠にも選ばれたんです。まさか自分がそこに入るとは思っていませんでした。 射撃って、一見単純に見えるけど、集中力や呼吸、メンタルの安定がものすごく大事なんです。緊張でほんの少しズレるだけで外れる。その”あと少し”の感覚がクセになる。 やってみないと分からない魅力があります。
僕は「完全な共存は無理」だと思っています。けれど、「排除」も違う。大事なのはバランスです。 今、鹿が増えすぎて山が丸裸になり、緑がなくなって土砂崩れが起きることもある。山の保水力が落ちて、川や田畑にも影響が出る。だから。必要な数を保つための狩猟は「管理」として必要だと思います。 ただ、その命をどう扱うかは人間側の責任です。数を減らすだけで終わらせず、肉や皮、角を活かして循環させる。そういう意識を持つことが、共存への第一歩かなと思っています。
めちゃくちゃ強いです。滋賀って本当に面白い場所なんですよ。街があってすぐ近くに琵琶湖があって。そのまま山に入れる。自然との距離がものすごく近い。だからこそ、うちの店を「地域のハブ」にしたいと思っています。例えば、滋賀の唐辛子を扱っている農家さんの商品を置いたり、地元の職人さんと一緒にアクセサリーを作ったり。ここを通じて、地域の産業や人につながる場所にしたいです。
10年後には「滋賀=狩猟の街」と言われるようにしたいですね。京都や大阪と比べると、滋賀にはまだ「名の知れた観光ブランド」が少ない。でも、その分可能性があると思っていて。狩猟を軸に、飲食・鉄加工・アウトドア・クラフトなど、さまざまな産業を巻き込む。そうやって滋賀全体にブランド化していく。これが僕の描く「狩猟ブランディング」の未来です。
一言で言えば、「面白いことを本気でやろうとしている人」ですね。儲かるかどうかよりも、心からワクワクして動ける人。あと、尖ってる人が好きです。自分の分野で「これだけは誰にも負けない」って言える人。そういう人と組むと、全く違う発想が生まれる。お互いの「好き」や「得意」をぶつけ合える関係が理想です。 鉄砲店という固定されたイメージをガラッと変えて、狩猟をもっと自由で面白い文化にしたい。そのために、業界の枠を超えて挑戦できる人たちと、一緒に滋賀を盛り上げていけたらと思っています。
| 企業名 | 株式会社濵﨑銃砲火薬店 |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県大津市長等三丁目2番24号 |
| 創業年 | 大正12年9月 |
| 代表者 | 濵﨑 航平(次期代表) |
| 事業内容 | 猟銃等の販売事業・火薬類の販売営業 |
| 企業ロゴ | ![]() |